米英仏のシリア空爆ときっかけとなった貧者の核兵器「化学兵器」について

ついにシリア空爆

今週シリア情勢が大きく動き出しました

米国防総省は14日、シリアのアサド政権の化学兵器関連施設を対象とした軍事行動で「すべての標的への攻撃に成功した」と発表した。米英仏の共同攻撃で105発のミサイルを発射した。アサド政権による化学兵器の開発は「数年間は妨げられる」と説明した。

トランプ氏「任務完了」 シリアへミサイル105発 :日本経済新聞

きっかけとなったのはシリアの化学兵器使用疑惑

トランプ米大統領は9日の閣議で、シリアのアサド政権による化学兵器の使用疑惑を受けて「24時間から48時間以内に大きな決断をする」と述べ、いよいよ攻撃か?ということで新聞見出し含め大きく取り上げられました

動画

米大統領、シリア問題「48時間以内に大きな決断」 (写真=AP) :日本経済新聞

しかしながら48時間経過しても何も起きず

「やっぱり攻撃しないんじゃね?」

と思われていたところでの今回の電撃発表

どうやら12日夜などに攻撃を予定していたがロシアに被害が及ばないように調整、アサド政権が化学兵器を使った「証拠」固め、英国やフランスとの調整などに時間を要して2回攻撃を延期させた為、このタイミングになったとのこと

【シリア攻撃】米攻撃「決断」まで2回延期 「48時間」大きく過ぎ…(1/2ページ) - 産経ニュース

関連情報が氾濫していますので、経緯や政治的思惑は他のニュースを見ていただくとして、

今回の攻撃のきっかけとなった「化学兵器」についてまとめました

「貧者の核兵器」化学兵器

Syrian children receive treatment after a suspected chemical attack in Khan Sheikhoun (4 April 2017)

Syria chemical 'attack': What we know - BBC News

ニュースサイトやYoutubeにも被害の動画がたくさんありましたが、

地獄のような状況が広がっていました。

※かなり凄惨な映像なので苦手な方は絶対見ないでください

Videos show Syria 'chemical attack victims' - YouTube

www.youtube.com

瞳孔が開き焦点の定まらない目、痙攣する男性、横たわる子供たち

同じ地球の上で今起こっていることとは思いたくないような状況です

世界保健機関(WHO)は11日、シリアのアサド政権が首都ダマスカス近郊東グータ地区で使用したとみられる化学兵器により、43人が死亡したとの推計を発表した。
現地の医療従事者からの情報によると、「地下に避難していた70人超が死亡し、そのうち43人が、猛毒の化学兵器にさらされた症状があった」という。
そのほかに約500人が化学兵器によるものとみられる症状を呈していることを明らかにした。粘膜や呼吸器系、中枢神経系の症状が顕著という。

シリア化学兵器の死者43人か=WHO、被害者への接触要求:時事ドットコム 

(米政府は13日)首都ダマスカス近郊の東グータ地区ドゥーマで多数が死傷した7日の攻撃について、猛毒の神経剤サリンが使われたことを示唆。現地の交戦当事者で、そうした攻撃が可能なのはアサド政権軍だけだと強調し、米軍による武力行使を正当化した。
 米政府はこの中で、現地の映像や画像を根拠に、ドゥーマへの攻撃では少なくとも2個の「たる爆弾」が使われたと主張。爆弾投下後に現場入りした医療関係者らの報告として「塩素ガスの強烈な臭いとともに、サリンを浴びたのと一致する症状が(被害者に)見られた」と明らかにした。

アサド政権のサリン使用示唆=米政府、シリア攻撃を正当化:時事ドットコム

たる爆弾とは

www.youtube.com・名前の通りたるやドラム缶に爆薬などを詰めて起爆させるだけの原始的な爆弾

・戦闘機に搭載出来ず、輸送ヘリコプターに積載してドアを開けて蹴落とす

・精密爆撃はできず、無差別爆撃しかできない

・アサド政府軍は国際社会の制裁により正規の爆弾の製造と輸入ができない為、簡易な施設で安価に大量に製造できるたる爆弾を使用している

輸送用ヘリが迎撃されない市民の居住区への無差別爆撃にしか使えない兵器

まとめますと、塩素ガス・サリンを詰めた「たる爆弾」を市街地に落とした疑いがもたれています 

「貧者の核兵器」化学兵器

サリンやVXガスなど、毒性のある化学物質で殺傷する大量破壊兵器のこと

特徴

・防護装備の不十分な目標に対しては、一度に多数の死傷者を生じさせられる。
・核兵器に比べると、開発や生産が技術的に容易である。
・心理的効果が高く、敵兵に恐怖心を与える。
・火薬使用量が少なく、通常弾薬の生産と競合しにくい。
・種類によっては殺傷効果に持続性があり、敵の進撃経路を継続的に限定できる。 

資金・技術的に製造が容易で貧しい国やテロ組織にとって入手しやすく「貧者の核兵器」と呼ばれている

「大量破壊兵器」は核爆弾だけではないんですね

化学兵器の国際的ルール

1997年に開発・保有などを幅広く禁止する化学兵器禁止条約(CWC)が発効し、(シリアを含む190カ国以上が加盟)し、国際的に使用は禁じられています 

戦争にいいも悪いもありませんが、後遺症含めあまりに被害が凄惨になる点と、ガスマスクなど装備の良好な軍隊には効果が薄く、民間人や非正規軍には被害が出やすい兵器だということが考慮されたようです

しかしシリアのアサド政権は今までも数多く化学兵器の使用が疑われてきました

非難の矛先はアサド政権に向けられている。長期化する内戦での化学兵器の使用はすでに数十回に上る。その多くがアサド政権による仕業とされるが、タブーとも言える化学兵器の投下はもはや常態化している。

被害者に多大の苦痛を与えるサリンなどの化学兵器は、反体制派やそれを支える市民の戦意を挫き、効果は絶大だ。ロシアやイランの軍事支援に依存するアサド政権にとっては、自前で調達できる効率的な兵器と位置付けられる。

シリアで化学兵器が「容認」されつつある実態 | アジア諸国 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

シリアでは現政権側と反体制側で2011年から内戦が続いています

民間人への攻撃は心理的な効果を狙ってのものとされています

使用された「塩素ガス」「サリン」とは

塩素ガス

www.youtube.com

黄色っぽい色の煙が塩素ガスのようです

・塩素自体は水道水の浄化、塩素系洗剤等でも使用される身近な物質

・塩素系洗剤と酸性洗剤を混ぜた際に発生するガスも塩素ガス

・上記のように極めて製造が容易、1915年より化学兵器として使用

・塩素ガスは刺激性のある黄緑色の気体

・空気より重いため、発生すると低いところへと流れる

塩素を吸引するとまず呼吸器に損傷を与える。空気中である程度以上の濃度では、皮膚の粘膜を強く刺激する。目や呼吸器の粘膜を刺激して咳や嘔吐を催し、重大な場合には呼吸不全で死に至る場合もある。

塩素 - Wikipedia

殺傷力はそこまで高くないようですが、安く、簡単に作れる上、被害を受けると呼吸困難になるなどパニックになり心理的な効果は絶大です

サリン
有機リン化合物で神経ガスの一種

症状

サリンに曝露すると1分と経たずに以下のような症状が出る

軽症
胸部圧迫感、発汗、嘔吐、腹痛、下痢、頭痛、めまい
中等症
視力減退、顔面蒼白、筋線維性痙縮、言語障害、興奮、錯乱状態
重症
失禁、肺水腫、呼吸困難、呼吸筋麻痺、意識混濁、昏睡、全身痙攣

体温上昇などを起して死亡

殺傷能力

殺傷能力が非常に強く、吸収した量によっては数分で症状が現れる

・呼吸器系からだけでなく皮膚からも吸収されるため、ガスマスクだけではなく対応する防護服を着用しなければ防護できない

・体重60 kgのヒトが1680 mg(約1.5 mL)のサリンを経皮吸収すると、その半数が死亡する

皮膚に一滴垂らすだけで確実に死に至るとの記述も

サリン - Wikipedia

日本でも世界に類を見ない宗教団体による同時多発テロ「地下鉄サリン事件」で使用されたことは記憶に新しい。死亡者 13人。負傷者 約6,300人という凄惨な被害を出したこの事件で使われたのも猛毒「サリン」

第二次世界大戦中のナチスドイツで開発され、ヒトラーでも使用を躊躇ったという噂の非人道的兵器の代表

そんなものを命中精度の低い、たる爆弾で上空から無差別に落としていたとしたら正直常軌を逸していると感じてしまいます

今後の懸念点

証拠の有無

上記の化学兵器の使用はかなり疑わしいものの確たる証拠が示されないまま攻撃に踏み切りました

米、アサド政権の化学兵器使用断定 証拠は示さず :日本経済新聞

ある程度の論証が揃ったからと思われますが、米国は2003年のイラク戦争で、大量破壊兵器を保有していると主張し、安保理決議のないまま、攻撃を開始したけれどその理由とした大量破壊兵器は最終的に見つからず、非難された過去があります

早速ロシアが今回の攻撃を「侵略行為」と非難し、安保理に攻撃非難の決議案を採決するなど旧冷戦を思わせるような対立構図が出来つつあります。今後の展開には目が離せません

安保理、シリア攻撃非難のロシア案否決 :日本経済新聞

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Coordination on Syria Strikes Belies Simmering Tensions - WSJ

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Vladimir Putin calls US-led Syria strikes an 'act of aggression' | World news | The Guardian

まとめ

・同じ地球、同じ時代に地獄のような状況が存在しうる

・攻撃の証拠は無くても現実に多くの人が苦しんでいる

・日本も国内問題にかまけずシリア情勢に目を向けるべきだと思う

 

ではでは

 

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