危険な現代の奴隷制度か?生産性回復の切り札か? 裁量労働制について

私は普段テレビはほとんど見ないのですが、かなり議論が紛糾していた様ですね

www.kantei.go.jp

働き方改革法案の一つ「裁量労働制」について厚生労働省の根拠データの不備などもあり今国会での成立が見送られる方針になったようです。

野党はここぞとばかりに他の法案の是非を含め安倍総理への追及を強めている模様。

この問題本当に難しくて、正解なんてないのかもしれません。

ただ私の意見としましては正しく運用される限りにおいて裁量労働制に賛成です。

薬にしろナイフにしろ正しく使われる分には便利だし、悪用される分には危険なものになりえるように、裁量労働制それ自体は働き方としてあっていいと思います。

理由について説明させて頂きます。

※補足:裁量労働制とは?

実際に働いた時間でなく、あらかじめ労使で決めた「みなし労働時間」を基に賃金を支払う制度。一般的には労働基準法に基づく法定労働時間(1日8時間)で働き、実際の労働時間が法定を超えると残業代が払われる。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO27534680R00C18A3EA2000/

様々なメディアで取り上げられましたのでことさらご説明するのも恐縮ですが、これまでの労働環境をもとに労使間で協議して「これくらい働いたもの」とみなして賃金を支払う制度のことで決められた成果を出せば出勤時間や労働時間など労働者の自由に定められる制度のことです。

導入に際しては、労使双方の合意(専門業務型では労使協定の締結、企画業務型では労使委員会の決議)と事業場所轄の労働基準監督署長への届け出とが必要とのことで事前の協議が大変重要になります。

※以下あくまで個人の意見ですので、こういう考えの人もいるんだ程度の軽い気持ちでお聞きいただけると幸いです。繰り返しますが正解なんてなくて、様々な見方が想定しうる問題だと思います。

今までの働き方を振り返って

私は今まで営業系事務系の仕事を経験したことがあります。どちらも今回の裁量労働制の適用職種ではないのですが、営業系は(どこもそうなのかもしれませんが)数字(営業結果)さえだせばたとえそのあとサボっていても文句は言われない、どちらかといえば裁量労働に近いような考え方があり、事務系はどちらかと言えばしっかりと勤務時間中は淡々と業務に従事するというような考え方の職場でした。

営業系の仕事

証券営業でしたので言葉で何回言っても伝えきれませんが本当に厳しかったです。必死で何時間もしらみつぶしに電話をかけても一本もアポが取れない時もあれば、朝来て10分で今日の目標を達成してしまうような時もありました。

ただそんなラッキーパンチも普段営業努力もしていない人のところには来るわけがないので、みな効率的に要領よく成果をだしてやろうという考え方があったように感じました。朝ふとぼーっとしてようものなら、課長から

「お前この1時間何してたんだ!!この1時間、10分ごとに何をやっていたか詳細に報告しろ!!」

何て激を飛ばされました。ほんと泣きそうでした(ちょっと泣いてました)

まあただしおかげで時間効率集中して結果を出すことを考える様にはなったような気がしますし成長できたと思います。当時は本当に本当に嫌でしたけど。

事務系の仕事

打って変わって事務の仕事。毎日の激詰めに心身ともに限界だった私は、何て穏やかな職場なんだと感銘を受けた記憶があります。怒鳴る人がいない!

ただ次第に何でこんなちょっと話せばいいことをわざわざ会議設定して文章にするのだろうとか、すぐにお客様に連絡すればいいことをだらだら社内でああでもないこうでもないやっているのだろうと業務の効率性の悪さが目に付くようになりました。

深夜まで残って仕事をしている人が頑張っているように見なされている雰囲気があり、酷い人だと午前中はやる気が出ないとか言ってだらだら仕事をして定時過ぎてから色々やりだすような人もちらほら。これでも十分腹が立っていたのですが、その中でも特に腹が立つことが二つありまして、

一つは私が一通り今日やらないといけないことを終えて帰ろうとしたときのその人の

「え、○○さんもう帰るの?」の一言。

「うるせぇ帰るに決まってんだろ」

実際は「すみません、ちょっと予定が…」とか言って帰りましたが。

もう一つはそいつのが給料が多いという事実。

理由は簡単。残業代が多いから。残業時間込みでもそいつより仕事やっている自信はあったのですが。本当にやるせなく。転職理由の一つになりました。

時間給の致命的欠陥

今の時間で給料が決定する労働形態では、なるべくだらだらと長時間仕事をすることに対してのインセンティブが働きます。だって楽だし、給料も沢山貰えるから。

日本の雇用環境では昇進もゆっくりな為、手っ取り早く手取りを増やすには残業を沢山するのが効果的な戦略になってしまう。

クビにもできない為、結局は個々人の良心に任されているこのシステムはこれからの働き方の制度として合わなくなってきてしまっているのでないかと考えます。

もともと時間給は働く時間に応じて生産量が増える工場労働者の制度設計だったようで、これから人間が担う創造的な仕事とも相性が合わないともいわれています。

今回の法案による対象の拡大範囲について

ただもろ手を挙げて裁量労働に賛成かと申しますとやはり先ほどの道具の使いようの話じゃないですけど気になる点があり、全面的に賛成は出来ませんでした。

理由は今回裁量労働制の適用が拡大するはずだった職種の定義

現在、研究開発職、ジャーナリスト、大学教授、会計士、弁護士といった専門職(専門業務型裁量労働制)や、経営企画部門の社員など、一部の職種(企画業務型裁量労働制)にのみ適用が許されているのを、今回提出予定であった法案では、

企画業務型の範囲を拡大し、

「課題解決型の開発提案業務」

「裁量的にPDCAを回す業務」

の二種が追加される予定でした。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000176290.pdf

「課題解決型の開発提案業務」

「裁量的にPDCAを回す業務」

 …なんか漠然としすぎているような。

厚生労働省の資料では以下のような職とされています

①「課題解決型の開発提案業務」

【例】取引先企業のニーズを聴取し、社内で新商品開発の企画立案を行い、当該ニーズに応じた商品やサービスを開発の上、販売する業務 等

②「裁量的にPDCAを回す業務」 

【例】全社レベルの品質管理の取組計画を企画立案するとともに、当該計画に基づく調達や監査の改善を行い、各工場に展開するとともに、その過程で示された意見等をみて、さらなる改善の取組計画を企画立案する業務 等

例を挙げても漠然としている感が否めません。

特に②はPDCA(Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)業務管理、改善の手法)なんて回そうと思ったら誰でもできるものなので、拡大解釈の余地が大きいように思えます。適用の年収の下限もないらしく不安です。

肩書なんて

私の営業の時の肩書は「資産コンサルタント」でした友人は「ファイナンシャルコーチ」でした。繰り返しますがどちらも営業です。セールスです。何が言いたいかと言いますと企業の解釈によって職業の建付けはこじつけられるという点です。

景気が良くなったとはいえ転職は簡単ではないし、日本はまだまだ雇用者と被雇用者とが交渉になったら雇用者の力が強い社会だと思います。

条件交渉で雇用者が不利にならないような制度設計や適用業務や年収などが納得できるレベルまでにならないとなかなか賛成までは行きません。

かといって反対派に賛同できない。。。

1.過労死報道について

www.asahi.com

各紙で大きく報道されましたのでご存知の方も多いはず。

事件の概要は以下の通り

・不動産大手「野村不動産」の50代男性が2016年に自殺

・原因は長時間労働による過労とみられている。

・自殺前の1カ月の残業時間が180時間を超えていたという。

・2017年12月に労災認定(これが今回判明したのこと

過労死ラインと呼ばれる健康と長時間労働の因果関係を認めやすいラインは月80時間だそうで余裕で超えていますね。これでは体も心もまいってしまう。

50代といえば推測ですが子供が大学生という家庭も多いはず。家族の為に辞めるに辞められなかったのかなと思っていしまいます。痛ましい事件です。

違和感

この事件は本社が労働基準監督署から2017年12月に是正勧告を受けている通り結構前から報じられていて、今回わかったのが労災認定されたという事実

野党はこの事件を材料に政権を攻撃、厚生労働省などの提出データの不備などもあり、結果として今国会での法案成立が見送られましたのは初めにお話しました通りです。

朝日新聞のタイトルと内容が何か意図的なような…。

まるで裁量労働が男性を死に追いやったように読めます。

労災認定で分かったことは遺族がお金を受けとれてよかったということと、野村不動産が違法な労働を雇用者に課していたという点のはず。自殺の原因は超過勤務で悪いのはそれを課していた野村不動産。裁量労働制関係ありますかね…

仮に残業代が出ていたとしたらこの方は死ななかったのか。

2.「定額働かせ放題」のデモ

先月末裁量労働制に関して、どれだけ働こうが賃金支払いが一定であることから一部では「定額働かせ放題」などと言われ、抗議運動がおこったそうです。

mainichi.jp

ラップ調での主張がセンスを疑う点はさておき、

デモ参加者の取材の主張を並べますと以下の通り

①「同じ会社で夜遅くまで働いて体調を壊して辞めた友人がいてそれを合法化する法律には反対である」

②「名ばかり管理職の過労死が問題になったが、それは管理職だから裁量労働制が適用されたせいでありそれがいろんな人に広がる可能性がある」

③「過労死される方がこんなにいる中で、残業がいくらでもできる仕組みを作ってはいけない」

④「現状でも毎日仕事を朝の3時まで仕事を持ち帰って仕事をしている。残業代は1時間しか出ていないような状況であり(法案成立が)恐ろしい」

もちろん前後の文脈や個別の事情もあるので一概に言えませんが、

裁量労働制は法定労働時間の規制範囲

まず①と③に関しては裁量労働制は長時間労働を合法化する法律ではないという点

裁量労働制度は一見すると残業代が出ないように見えますが、みなし時間についても労働基準法の規制は及ぶため、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える場合は、36協定を結ぶ必要があり、法定労働時間を超えている場合は、割増賃金を支払う必要があるとのこと。裁量労働制においても長時間労働は違法とのこと。

ただし求められる成果に対した時間に設定されているか事前の労使交渉でしっかり確認することが必要その交渉を労働者が不利にならないような法制度が必要だと思います

そうするように働きかけるのが本来あるべき抗議の方向性では?と思ってしまいます

名ばかり管理職は管理監督者の定義の問題で別問題

②の名ばかり管理職に関してはそもそも今回の被雇用者を対象にした裁量労働制とは別問題だし、完全に違法であるとしていくつかの残業代の支払い命令が出ています。

www.huffingtonpost.jp

労働基準法の「管理監督者」では確かに残業代は支給されないようですが、その定義は厳密な要件があり行政通達や裁判例では、「経営者と一体的立場にある労働者」としていて具体的には

企業の部門等を統括する立場にあること
企業経営への関与が認められること
自身の業務量や業務時間を裁量的にコントロールできること
賃金面で十分に優遇されていること

といった要件が必要でファストフードの店長のような立場では「管理監督者」とは言えないそうです。

行くところが別では…?

④に関してはあれですね「サービス残業は法律違反」としか言えないですよね。新宿で抗議する前に雇用主のところに行くか、それが難しいなら労働基準監督署とかに行くべきでは?と勘繰ってしまいます。私冷たい人間ですかね…。

まとめ

・時間給だけではだらだら残業は防げない

・裁量労働制は正しく使えば低い日本の労働生産性を上げられる

・間違って使えば日本はもっと暗くなる

・日経新聞は企業に寄りすぎだし、朝日は反安倍政権に寄りすぎ

・多分私も寄っています。人類みなポジショントーク。

・ただ今年は働き方が大きく動き出す(はず!)

 

ではでは

 

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